2009卒
ＦＣ東京、今年度入団 米本拓司さん

その瞬間、聖地国立を埋めた赤と青の歓喜が爆発した。前半２２分、高卒ルーキーのＭＦ米本が右足を一閃（せん）。無回転のまま、不規則な弾道を描く２５メートルのミドルシュートが日本代表ＧＫ川島の両手をはじき飛ばした。「フリーだったので打っちゃえって。（運を）持ってるキャラじゃないんですけど」。丸刈り頭の１８歳は瞬く間に歓喜の輪にのみ込まれた。優勝を決めるにふさわしい一撃。米本はニューヒーロー賞に続いてＭＶＰも獲得し、総額１５０万円を手中にした。

　無名の兵庫・伊丹高出身。Ｕ―１７日本代表監督時代の城福監督に才能を見いだされた、まさに秘蔵っ子。派手さはないが、驚異的な運動量が武器。１試合平均のボールタッチ数は司令塔・梶山の約２倍。新人ながらすぐに頭角を現し、５月にはボランチの定位置を確保。アジア杯予選日本代表にも予備登録された。指揮官が掲げる人もボールも動く攻撃的なサッカー「ムービングフットボール」の申し子が、大舞台で恩師に恩返しをした。